廃人速報

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会社員「電話で相手の声を聞き取れないんです」喪黒福造「それはお気の毒ですなぁ」

   

  2017/06/06(火) 00:30:03.96


喪黒「私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん」

喪黒「ただのセールスマンじゃございません」

喪黒「私が取り扱う品物は心……人間のココロでございます」

喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり」

喪黒「そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします」

喪黒「いいえ、お金は一銭もいただきません」

喪黒「お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます」

喪黒「さて、今日のお客様は……」

軟手 逸太(24) 会社員

オーッホッホッホッホッホ……




  2017/06/06(火) 00:30:03.96

      2017/06/06(火) 00:34:25.47


    ―会社―

    プルルルル…

    逸太「お電話ありがとうございます、南蝶商事です」ガチャッ

    逸太「え……あ、はい……。しょ、少々お待ち下さい」

    逸太「先輩にお電話です」

    先輩「誰から?」

    逸太「ちょっと聞き取れなくて……」

    先輩「チッ、またかよ〜……はい、お電話代わりました」

    先輩「ハァ? 家を買わないか? ……結構ですッ!」ガチャッ

    先輩「おい、セールスの電話なんて取り次ぐんじゃねえよ! 外出してるっていっとけ!」

    逸太「す、すみません!」



      2017/06/06(火) 00:36:11.77


    プルルルル…

    逸太「お電話ありがとうございます」ガチャッ

    電話『……だけど、課長いる?』

    逸太「すみません、もう一度お名前をおっしゃっていただけますか?」

    電話『……だけれど』

    逸太「あの、もう一度……」

    電話『何度聞き返すんだよ! いい加減にしろ! とっとと課長に代われ!』

    逸太「すっ、すみません、すみませぇん!」



     2017/06/06(火) 00:36:39.82


    面白そう



      2017/06/06(火) 00:38:34.61


    課長「軟手君、さっきの電話は大口取引先の部長さんじゃないか」

    課長「ウチの課の生命線を握ってるといっていい方だ」

    課長「それを何度も聞き返すようなマネをしちゃいかんよ。機嫌を損ねたらどうするんだね」

    逸太「申し訳ありません……!」

    先輩「お前ももう新人じゃないんだぜ?」

    先輩「いい加減、電話の受け答えぐらいまともにやってくれねえと困るぜ!」

    先輩「そんなんじゃ、20代でリストラされちまうぞ!」

    逸太「はい……」

    逸太(ハァ……どうしてぼくはいつもこうなんだ……)



      2017/06/06(火) 00:39:59.65


    ―駅―

    逸太(やっと一日が終わった……早く帰って寝よう)

    アナウンス『○×線は現在、運転を見合わせております……』

    逸太「え!?」

    逸太(あ〜あ、こりゃしばらく動きそうもないな……)



    10   2017/06/06(火) 00:41:06.12


    あー俺も電話にかぎらず聞き取れないことおおいわあ



    11   2017/06/06(火) 00:41:27.12


    喪黒「こんばんは」ヌウッ

    逸太「おわっ!」

    喪黒「ホッホッホ、これは失礼。お互い思わぬ足止めを食ってしまいましたなぁ」

    逸太「え、ええ……そうですね」

    ピリリリリ…

    逸太(会社のケータイが鳴ってる……会社からだ。なんだろう?)

    喪黒「おや、携帯電話が鳴ってますよ?」

    逸太(出たくない……これに出てもまた何度も聞き返すはめになって……)

    先輩『お前、まともに電話の受け答えもできねえのかよ!』

    課長『軟手君……はっきりいって、君は新人未満だよ……』

    逸太(うう……電話に出るのが怖い……!)



    13   2017/06/06(火) 00:43:26.79


    逸太「ううう……」ピリリリ…

    喪黒「どうしました? 出ないのですか?」

    逸太「いえ、その……」ピリリリ…

    喪黒「ならば、私が出てしまいましょう」サッ

    逸太「ちょっ!」

    喪黒「もしもしぃ、私です。はい……はい……分かりました」

    喪黒「いつもと声が違う? いえいえ、気のせいでしょう。では……」ピッ

    喪黒「これ、お返しします。課長さんからのお電話でしたな」

    喪黒「朝に軽く打ち合わせをしたいから、明日は早めに出社するように、とのことです」

    逸太「ど、どうも……ありがとうございます……!」



    14   2017/06/06(火) 00:45:42.41


    喪黒「ところで、どうして電話に出なかったのですか?」

    喪黒「出なければ、明日課長さんに怒られてたかもしれませんよぉ〜」

    逸太「それが、その……」

    喪黒「……なにか事情がありそうですな」

    喪黒「いかがでしょ? まだ電車は動きそうもありませんし、近くのバーで一杯」

    逸太「は、はぁ……」



    15   2017/06/06(火) 00:47:40.91


    いいぞ



    16   2017/06/06(火) 00:49:29.85


    ―BAR魔の巣―

    マスター「……」キュッキュッ

    逸太「さっきぼくが電話を取れなかったのは……電話が怖いからなんです」

    喪黒「ほう、なぜ電話が怖いのですか?」

    逸太「実はぼく……電話で相手の声を聞き取るのがどうも苦手で……」

    逸太「そのせいで、何度も怒られたり、呆れられたりしてるんです」

    逸太「取引先を怒らせたのも一度や二度じゃなくて……」

    喪黒「ほっほぉ〜、それはお気の毒ですなぁ」

    逸太「もちろん、病院にだって通いました。ですが、耳にはなんの異常もありませんでした」

    逸太「実際、こうして話してる時には大丈夫なんです」

    逸太「なのになんで電話の時だけ……!」グビッ



    22   2017/06/06(火) 00:57:28.86


    喪黒「軟手さん、あなたにはこれを差し上げましょう」スッ

    逸太(小さいボトルに液体が入ってる……)

    逸太「これは……?」

    喪黒「とてもよく効く耳の薬です。一日一回、耳に垂らして下さい」

    喪黒「これを耳の中に垂らせば、もう電話で相手の声が聞き取れない、ということはなくなるでしょう」

    逸太「ほ、本当ですか!?」

    喪黒「ただし、この薬はこれ一本しかありません」

    喪黒「この薬を使い切る前に、カウンセリングを受けるなり、改めて病院に行くなりして」

    喪黒「自分で今の状態を改善しなければなりません。よろしいですね?」

    逸太「……分かりました!」



    23   2017/06/06(火) 01:00:15.66


    ―自宅―

    チュンチュン… チュチュン…

    逸太(昨日会った喪黒さん……なんとも不思議な人だったな)

    逸太(この薬……試してみるか)

    ポトッ…

    逸太(ううん……別にどうってことないぞ。もしかして、からかわれたんじゃなかろうか)

    逸太「おっと、こうしちゃいられない! 今日は早めに出社するんだった!」タタタッ



    24   2017/06/06(火) 01:03:40.42


    ―会社―

    プルルルル…

    逸太(……来た)

    逸太(怖がってもしょうがない……取ってみよう!)ガチャッ

    逸太「お電話ありがとうございます、南蝶商事です」

    電話『あーどうも、ケムマキ社の服部ですけども。課長さんいますかね?』

    逸太「!」

    逸太(聞こえる! 聞こえるぞ!)

    逸太(まるでもやが晴れたかのように、くっきりと相手の声が聞こえる!)



    25   2017/06/06(火) 01:06:24.46


    逸太「もしもし! あ〜……これはどうも、いつもお世話になっております!」

    逸太「お電話ありがとうございます!」

    逸太「はい、その件につきましては……ええ、ええ、承知しました!」

    逸太(聞き取れる、聞き取れる! 面白いように聞き取れる!)

    逸太(昨日までの聞き取れなさがまるでウソのようだ……!)



    26   2017/06/06(火) 01:09:42.20


    先輩「あれ? お前、いつも電話してる時はビクついてるのに、今日はやけに調子がいいじゃんか」

    逸太「先輩、どうやらぼく、やっと電話への苦手意識を克服できましてね」

    逸太「こんなに仕事が楽しいのは入社以来はじめてですよ!」

    先輩「大げさな奴だなぁ……ま、その調子で頑張れよ!」

    逸太「はいっ!」



    29   2017/06/06(火) 01:13:17.66


    ―BAR魔の巣―

    逸太「ありがとうございました、喪黒さん!」

    逸太「あの薬をつけると、電話の声を本当によく聞き取ることができて……」

    喪黒「オ〜ッホッホ、それはよかったですなぁ」

    喪黒「ただし……薬はあれ一本きりですからね。そのことを決して忘れないで下さい」

    逸太「はい、あの薬があるうちに何かしらの手を打ちますよ」

    喪黒「……」



    30   2017/06/06(火) 01:13:49.62


    雰囲気バッチリだな



    31   2017/06/06(火) 01:15:27.72


    モグロアイが光ってそう



    32   2017/06/06(火) 01:17:59.01


    ―会社―

    課長「軟手君、このあいだのプレゼンテーション、よかったよ!」

    逸太「ありがとうございます」

    課長「以前のように電話に出るたびに、トラブルを起こす……ということもなくなったし」

    課長「これなら、君にも大事な仕事を任せていけそうだ」

    逸太「はいっ、お任せ下さい!」

    課長「お前もうかうかしてると、すぐ軟手君に抜かれてしまうぞ」

    先輩「いやぁ〜、まさか軟手がこんなに急成長するなんて……」

    逸太(苦手な電話を克服してから、仕事が絶好調だ……)



    33   2017/06/06(火) 01:19:59.68


    逸太(だけど、その分忙しくなっちゃって……)

    逸太(とても、カウンセリングだのなんだのを受けてる余裕はないなぁ)

    チャプ…

    逸太(ま、いっか! まだ薬は半分以上残ってるし……当分これに頼って大丈夫だろう)

    逸太(それにカウンセリングや病院なんかに通うのは、自分が異常だって認めるようでなんか嫌だもんな)

    逸太(今のいい状態に、わざわざケチをつけるようなマネはしたくないよ)



    34   2017/06/06(火) 01:23:27.28


    ……

    ―自宅―

    逸太「……まずい」

    逸太「気づいたら、もう薬があと数回分しかないぞ」

    逸太「このところ絶好調だったからすっかり忘れてたけど、もしこの薬がなくなったら……」

    逸太『すみません、お電話が遠いようなのでもう一度おっしゃっていただけますか?』

    逸太『あの……やはり口頭じゃなくてメールを送ってくださ……すみません、すみません!』

    逸太(またあの地獄の日々に戻ってしまう!)

    逸太「今すぐカウンセリング受けないと! さっそく電話しなきゃ!」



    35   2017/06/06(火) 01:26:33.99


    逸太「もしもし!?」

    逸太「あのーお宅でカウンセリングを受けたいんですけど!」

    逸太「え!? なんとおっしゃいました!? ……え、もう一度!」

    逸太「予約が当分埋まってる!? ……来週じゃダメなんですよぉ〜、それじゃ間に合わない!」

    逸太「もしもし、耳鼻科ですか!?」

    逸太「診察を受けたいんですが……え、なんていいました? 予約じゃなきゃダメ!?」

    逸太「え……聞こえません! あ〜もう……結構です!」



    36   2017/06/06(火) 01:27:20.64


    あかん



    37   2017/06/06(火) 01:28:34.09


    逸太「あの……正しい電話の受け方講座さん?」

    逸太「今すぐ、お宅の受講生になりたいんです! え、なんですか? ……あの、もう一度!」

    逸太「さすがに今すぐってのは無理? ああもう、この役立たず!」

    逸太「ったく、どいつもこいつも……!」ギリッ…



    38   2017/06/06(火) 01:32:32.41


    ―会社―

    逸太「ついに薬がなくなってしまった……」

    逸太「こうなったら仕方ない……喪黒さんに連絡するしか……!」

    逸太「あの人の名刺に電話番号が書いてあったはず……なんとしても薬をもう一本もらわなきゃ!」

    プルルルル…

    喪黒『もしもしぃ、喪黒ですが』

    逸太「あっ、喪黒さん!」

    喪黒『この声は軟手さんですな? なにかご用ですか?』



    39   2017/06/06(火) 01:36:05.76


    逸太「喪黒さん、お願いです! あの耳の薬をもう一本ください!」

    喪黒『軟手さぁん、あの薬は一本きりだといったでしょう』

    逸太「そこをなんとか……お願いしますよ!」

    逸太「あれがないと、ぼくはまた電話恐怖症に戻ってしまう!」

    逸太「電話の声が聞き取れないのは、もう嫌なんですぅ!」

    喪黒『分かりました……でしたら』

    喪黒『あなたの耳が思う存分、電話の声を聞き取れるようにして差し上げましょう』

    逸太「え? 今なんていったんですか?」

    ムクムク…

    逸太(なんだ? 受話器が勝手に動いて、ぼくの顔を向いた……)



    40   2017/06/06(火) 01:38:20.79


    喪黒『ドーン!!!』

    逸太「うわああああああああああっ!!!」

    ああぁぁぁぁぁ……

    …………

    ……



    42   2017/06/06(火) 01:42:46.17


    ……

    …………

    ―会社―

    プルルルル…

    逸太「電話だ」

    逸太「お電話ありがとうございます、南蝶商事です」ガチャッ



    43   2017/06/06(火) 01:43:14.27


    ドーーーーーン!



    44   2017/06/06(火) 01:45:30.80


    電話『 先 ほ ど お 電 話 し た 田 中 と 申 し ま す が 』

    逸太「!!?」

    逸太(な、なんだ!? ものすごい音量だ!)

    逸太「あの、もう少し小さい声で……」

    電話『 え ? 普 通 の 声 で し ゃ べ っ て ま す け ど 』

    電話『 ザワザワ… ガヤガヤ… ビュオオオオ… 』

    逸太(声だけじゃない! 電話の相手側の周囲の声や風の音、息づかいまで聞こえてくる!)

    逸太(なんてうるささだ! こんなの耐えられない!)

    電話『 も し も し ? 』

    逸太「うっ、うるさぁい!!!」ガチャン



    46   2017/06/06(火) 01:47:39.01


    逸太「ハァ、ハァ、ハァ……なんなんだ一体……」

    先輩「おい、ずいぶん乱暴に電話切ってたけどどうした? クレーマーか?」

    先輩「おっ、俺にも電話だ。もしもし……」

    電話『 い つ も お 世 話 に な っ て ま す 』

    逸太「!!?」

    逸太(先輩の電話の相手の声まで、さっきと同じように聞こえてくる!)



    47   2017/06/06(火) 01:51:16.08


    逸太「それだけじゃない……」

    逸太「同じオフィスにいる、みんなの電話先の声が……」

    『 例 の 件 に つ い て 、 打 ち 合 わ せ を し た い の で す が 』

    『 で は 、 よ ろ し く お 願 い し ま す 』

    『 ハ ハ ハ 、 な る ほ ど な る ほ ど 〜 』

    逸太(どうなってるんだ、これは……!)ガタッ

    先輩「おい、どうした軟手?」

    逸太「うるさい、うるさい、うるさぁぁぁい!」タタタタッ



    49   2017/06/06(火) 01:55:33.65


    ―街―

    逸太「ハァ、ハァ、ハァ……」

    逸太(会社の外に出ちゃえば……ひとまず安心――)

    逸太「!!!」

    『 マ ジ で ー ? 信 じ ら ん な ー い ! 』

    『 そ う な の よ ぉ 〜 、 う ち の 主 人 っ た ら ケ チ で 』

    『 そ の 件 に つ き ま し て は お っ て ご 連 絡 い た し ま す 』

    逸太(街を歩いてる人のスマホやケータイの通話の音が……全部大音量で聞こえてくる!)

    逸太(耳ふさいでもダメだ……頭の中にガンガン響くぅ……!)



    50   2017/06/06(火) 01:58:18.26


    ウッソー! バイトダリー ゴメイワクヲオカケシマシタ… コンドイツアエルー? アリガトウゴザイマス! イクイクー! アハハハハハ

    ツギノジュギョウサボロッカナー フザケンナ! アイシテルヨ… デハ、エキデマチアワセマショウ… アトデラインオクルワー バーカ

    サキホドノミツモリ… ギャハハハハハッ! イイジャンイイジャン カフェニイルカラサー ウン… イマカラカエルネー コレハコレハブチョウ!

    逸太「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

    あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……



    51   2017/06/06(火) 02:01:35.43


    喪黒「軟手さんはもう電話があるところでは暮らしていけないかもしれませんなぁ」

    喪黒「しかし、これを機に苦手な電話から離れてみるというのも一つの手かもしれません」

    喪黒「それにしても、相手の声が聞き取れないのは不便ですが、聞き取れすぎるというのも考えものです」

    喪黒「耳がよすぎるのはイヤァ〜ん! ……なぁ〜んちゃって!」

    喪黒「オ〜ッホッホッホッホッホ……」

    ―おわり―



    52   2017/06/06(火) 02:02:45.37


    上手いな〜!
    おつ!



    53   2017/06/06(火) 02:03:43.62


    おもしろかった!



    54  2017/06/06(火) 02:15:08.06


    面白かった
    乙です



    55   2017/06/06(火) 02:15:34.92


    雰囲気出てて面白かった



    56   2017/06/06(火) 02:16:20.73


    よかった



    57   2017/06/06(火) 02:16:20.73


      引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1496676603/

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